「空が青いから白をえらんだのです 奈良少年刑務所詩集」(寮美千子編)

重荷を背負っている子どもたちの詩

「空が青いから白をえらんだのです
 奈良少年刑務所詩集」
(寮美千子編)新潮文庫

これはただの詩集ではありません。
奈良少年刑務所での
少年少女の更生の過程で創られた詩を
集めたものです。

かれこれ8年前、
中学校3年生を対象とした
ブックセイリング活動で、
子どもたちから
大きな反響があった本です。
自分が感銘を受けた詩の一節と、
それに対する感想を、
そのときカードに書いてもらいました。
いくつか拾い上げてみます。

「あの日、あの一歩を
 踏み出さなかったことを
 いまをがんばらない
 言い訳にするなオレ」

人は誰でも変わろうという
気持ちさえあれば
変わることが出来るのだと思う。
犯罪を犯してしまった彼の、
一生懸命変わろうとする気持ちが
伝わってきた。
自分もしっかりしなければ、と
気づかされた。
(女子AA)

「ぼくのゆめは…」
たった一言だけの詩で
絶句してしまった。
でも、それを書いた
彼の事情を知ってしまうと、
とても大きな意味を持っている
詩だと感じた。
彼が再スタートを切ることが
出来るように、
そしてその次の文がつなげられるように
祈りたい。
(男子OH)

「あたりまえのしあわせ
 あたりまえがしあわせ」

今生きていることが幸せなんだと
気づかせてくれた詩の一節。
過ちを犯した人たちも
精一杯生きている。
現代人誰しもが
気づかなければならないことだと思う。
(女子KH)

「そしたらぼくから
 つたえたいことがあるんだ
 うんでくれてありがとう」

犯罪を犯した人は、
罪を犯したのだから
親不孝だと思う人もいるかも
知れません。
だけど、みんな更生しようと
がんばっているんです。
彼らの言葉には、
罪を償おうとする
気持ちの重さがある。
だから美しいのだと思う。
(女子MS)

若い段階で大きな過ちを犯してしまう
少年少女が、少なからず存在する
日本の現状です。
必ずしも彼ら彼女らにだけ
責任があるのではなく、
私たちの社会全体にも
責任があるのではないかと思います。
教育に携わるものの一人として、
何か出来ることはないかと
日々考えています。

人生の中で最も多感な時期である
中学校3年生に、
ぜひ手にとってほしい一冊です。
この詩集に接して、
こうした重荷を背負っている
同世代の子どもたちに、
温かい視線を持つことが出来ればと
思います。

(2020.7.1)

PublicDomainPicturesによるPixabayからの画像

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